設計部スタッフブログ
~リベストらぼ~

小説と図面

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皆様こんにちは。
盛岡支店設計部の菊池です。
毎日うだるような暑さの中
いかがお過ごしでしょうか?
 

涼しい図書館で小説を読むのも
なかなかいいものです。



 
さて、小説にある描写とは何でしょう?
 
辞書で調べれば、
「物の形や状態、心に感じたことなどを、
言葉や絵画、音楽などによって写しあらわすこと」
といった説明が出てくるかと思います。
 
小説は文章で紡ぐ物語。
物の形や状態、
心に感じたことは全て文章で
言い表さなければなりません。
 
例えば、小説内のワンシーンで
彼女と桜並木を歩く情景を描く必要があるとします。
 
情景を「説明」するのであれば、
二人で桜の木が連なった遊歩道を
歩いていることが伝わりさえすれば問題ありません。


 
【例】
満開の桜並木を彼女と散歩してきた。
満開でとても綺麗だった。


 

「彼女と桜を見てきた」
「桜は満開だった」
と言う情報は理解できますね。
しかしただの情報の為、
なかなか頭の中で描写はしにくいですね。

 
では小説風に書くとどうでしょう。

【例】
咲き誇る花びらを風に揺らす桜並木。
眩しげに眼を細め、
穏やかな表情でゆったりと歩く貴方の姿に、
私はただただ見惚れていた。


 

 
上記はただ文章を修飾しただけではありません。
二つの文に、様々な情報を詰めました。
 
1、桜が満開であること
2、季節感
3、時間の流れ(体感的に)が緩やかであること
4、貴方の心理状態として多幸感
5、私の気持ち・想い
5、シーンとして緊張感を排除した「緩和」の状態
 
いかがでしょうか。
ただ桜並木を歩かせるより、
情景は目に浮かんできませんか?


 
私たち「設計部」が描いている図面も、
小説と似ていると思います。

お客様の頭の中に
「描写」して頂きやすいような図面作成です。
図面だけでは伝わりにくい情報を
いかに伝えるか努力しています。

例えば初回打ち合わせに提案する平面図。
平面図は間取りが分かれば情報は伝わります。



 

いかがでしょう?
間取りには寸法や部屋の大きさも入っているので
情報としては成立しています。
いわゆる「間取り図」です。
 


ではこちらの図面はいかがでしょう?



寸法や部屋の大きさも入っていますが
圧倒的に違うのは「文字数」です。

図面の中で伝わりにくい情報を
可視化した図面です。
 
最初の図面は16年前の図面です。
建物の大きさや寸法は入っていますが
その他の情報は一切ありません。


そして2枚目の図面は現在の図面です。
これでもか!
ってくらい文字や寸法が入っています。

カラーになっているので見やすいのもありますが、
とにかく情報量が多い図面です。

標準外サッシのサイズや高低差の寸法、
凡例で記号の説明や備考の注意書き、
高低差がある場合は断面図も入れています。
 
この情報量を「初回図面」から提出しています。

サッシや建具は納まるか?
幅や奥行きは適切か?
様々なチェックを経て提出しております。
 
「平面の中でいかに空間の描写をして頂くか」

これに拘って作図しています。

まさに設計部として「一棟入魂」の図面です。

私どもとお客様との中で
「描写」に相違があってはいけません。

お引き渡しの際に
「描写した通りの空間」を感じて頂くため
私たち設計部は日々努力しています。


この作家集団(設計部)
今後ともよろしくお願いします。



 
人も荷車も乾いた静物のように銀灰色に焼け、
水一つない風景の中で真夏の光を容赦なく浴びる今日この頃
皆様もお身体にはご自愛ください。

それはまた。